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国内外の技術トピックス

「環境関係の技術トピックス」

(1)EEDI(エネルギー効率設計指標)

国際海事機構(IMO)において、本年7月に開催された第62回海洋環境保護委員会(MEPC62)で国際海運におけるCO2排出規制に関する海洋汚染防止条約(MALPOL条約)附属書VIの一部改正案が採択されました。この改正により以下の対策が2013年1月から義務づけられます。
(I)2013年以降に建造契約が締結される新造船に対するCO2排出指標(エネルギー効率設計指標:EEDI)の導入と、これに基づくCO2排出規制の実施。
(II)省エネ運行計画(船舶エネルギー効率管理計画:SEEMP)の作成の義務づけEEDIは、新造船のCO2排出量を、設計、建造段階において「一定の条件下で、1トンの貨物を1マイル運ぶのに排出すると見積もられるCO2グラム数」とインデックス化し、船舶の燃料性能を差別化するものです。したがって、これからの船舶の付加価値を測る重要な要素となります。
EEDIの解説は、海事プレス9月28日号から3回に分けて連載記事があり、日本中小造船工業会CAJS会報2011年10月号No.389にも国土交通省の大坪氏の特別寄稿「国際海運におけるCO2排出規制とその運用について」が掲載されています。国土交通省のホームページhttp://www.mlit.go.jp/common/000045489.pdf から第62回海洋環境保護委員会(MEPC62)の審議結果の概要を見ることができます。
第62回海洋環境保護委員会(MEPC62)において我国から提案され、採択されたEEDIガイドライン
http://www.mlit.go.jp/common/000045489.pdfより転載

日本海事協会(NK)では、2013年1月1日の発効に先立ち、船舶のエネルギー効率改善に関する鑑定業務を開始しています。
詳しくは、ClassNKテクニカルインフォメーションNo.0863(2011年8月30日発行)「船舶のエネルギー効率改善に関する鑑定業務について」をご覧ください。
 
EEDIの計算例、横軸は満載排水重量(ton)、縦軸はEEDI(g/ton-mile)です。 
曲線は、船種ごとに与えられるリファレンスラインです。
リファレンスラインは既存船のEEDIの平均線を表しています。

2013年1月1日以降に建造契約が締結される船は、EEDIの規制値のフェーズワンとして、(1)EEDIを計算、第三者認証を受ける義務と、(2)それに加えて、EEDIがリファレンスライン以下を満足しなければならない義務の2つがあります。
対象船舶により適用規制が異なります。
(1)EEDIを計算して、第三者認証、証書発給を受ける義務
400GT以上の外航の新造船
(2)に示す船種に加えて、客船、RoRo客船、RoRo貨物船
(2)EEDIが一定基準値を満たす義務
一定サイズ(バルカーであれば10,000DWT、タンカーは4,000DWT)以上
バルカー、タンカー、ガスキャリア、コンテナ船、一般貨物船、冷凍運搬船、兼用船

「規制対象外」 内航船、400GT未満、既存船
(1)及び(2)に示す船種以外の船舶、タービン船、電機推進船
 

(2)バラスト水管理規制条約

 バラスト水の移動に伴う生物の移動防止を目的として、2004年2月にIMOにおいてバラスト水管理条約が採 択されました。同条約では、2009年建造船(バラスト水容量5000m3未満)から段階的に一定の生物殺滅性 能を有するバラスト水処理システムの搭載等を義務付けており、当該処理システムについては、活性物質(薬品 等)を使用する場合には、IMOの2段階の承認(基本承認、最終承認※)を取得する必要があります。
 我が国は、バラスト水管理条約に関して、早期締結・早期発効を目指すという立場ですが、現在の条約には、 実施が困難と思われる内容が含まれています。その一つが、バラスト水処理システム搭載に係る条約規則の適 用開始時期であり、2007年のIMO総会において、バラスト水容量5000m3未満の2009年建造船については、そ の適用開始時期を2年間延期することが決定されています。

 本年7月の国際海事機構(IMO)の会合では、バラスト水処理システムの承認、バラスト水処理システムの搭載に係る問題等について審議 がなされました。
※基本承認:活性物質が海洋環境に与える影響等を評価する実験室スケールでの試験結果の承認
最終承認:バラスト水処理システムと活性物質を組み合わせた試験結果の承認
 

(3)船舶より排出されるNOX、SOX規制

船舶より排出されるNOX、SOX規制は、国際海事機関(IMO)の海洋環境保護委員会(MEPC)において検討され、MARPOL条約附属書VIとして2005年5月に発効され規制が実施されています。

新造船に対するNOX規制
(1次規制)  NOX排出量の1次規制は、2005年5月19日に発効されており、外航船舶に搭載
       されたエンジンの場合は 2000年1月1日まで遡及適用されます。
              内航船の場合は 2005年5月19日より適用となります。
(2次規制)  2008年10月に採択された改正MARPOL条約附属書VIに2次規制が盛り込まれ、
              1次規制値に対して15%から22%のNOX排出量の削減が要求されております。
              この改正は2010年7月1日に発効され、2011年1月1日以降に起工される
       船舶に搭載のエンジンに適用されます。
(3次規制) 2016年より指定海域において、1次規制よりもNOXを80%削減する案が承認されて
       います。

現存船のエンジンに対するNOX規制
   (1) 対象エンジン:1990年以降に建造された現存船のエンジンのうち、
                    シリンダー容積90l以上かつ出力5000Kw以上であり、
          主管庁が規制適合手法を有すると認めたもの
   (2) 規制値      : 1次規制値
   (3) 規制実施時期 :主管庁が規制適合手法を認証し、
           IMOに通報してから1年以後の最初の定期検査

この他にも、日本小型船舶検査機構のホームページ http://www.jci.go.jp/nox/01.html及び
http://www.jci.go.jp/nox/pdf/nox_kiseigaiyou.pdfに、NOX規制の情報が参考になります。

    

日本船舶設計協会の技術開発

現在、社団法人日本船舶設計協会では、下記の設計支援ツールを開発中(一部開発済み)です。
順次、内容をご紹介する予定です。

(1)船級協会規則に基づく船体構造強度解析

(2)Hydro-static計算および復原性能計算


オフセットデータを入力すると、喫水ごとの排水量、浮心位置、TPC、MTC等を計算しHydro-static表を作成します。
また、復原性曲線を作成し船舶復原性規則に対応したGZのチェックも行います

(3)山県チャートに基づく造波抵抗およびパワーカーブ

造波抵抗を簡易的に推定するため、山県チャート(L/B、B/d修正を含む)のデジタル表を用いて、任意のCbに対応した造波抵抗曲線を作成します。
摩擦抵抗はFroudeの式を用いています。

(4)波浪中の船体運動と荷重解析

船体運動及び荷重計算は、下記のプログラムを選ぶことができます。
(I)  線形ストリップ法
(II) 非線形ストリップ法
(III)3Dパネル法
船舶の航行する海域の波浪データを勘案して、波浪による運動、荷重の最大値の予測も行います。

左の図は、規則的な向い波中を船の速度Fn=0.2で航行中のHeave運動の計算例です。
横軸は波の波長と船の長さの比、縦軸はHeave振幅と波振幅の比です。
 
波浪によって誘起される船体中央の縦曲げモーメントの計算例です。
規則的な向い波中を船の速度Fn=0.1で航行中に船体中央に波浪によって生じる縦曲げモーメントの計算例です。
横軸は波の波長と船の長さの比、縦軸は縦曲げモーメントです。
3Dパネル法の計算のための船体モデルです。
船体形状を四角形や三角形のパネルの集合体でモデル化します。
3Dパネル法の計算による船体運動計算結果です。
向い波状態のHeave運動計算結果です。横軸は波の円周波数、縦軸は、Heave運動振幅を波の振幅で割った値です。
Time cal. は、時系列計算、Frec. cal.は、周波数計算です。
時系列計算では、規則波、不規則波の中での運動、荷重のシミュレーションが可能です。

(5)薄い船の理論に基づく造波抵抗解析と船型改良診断

Michell-Havelock理論に基づく薄い船の理論を用いて、造波抵抗を計算します。
左の図は、Wigleyモデルという船型について造波抵抗を求めたものです。
横軸はフルード数Fn、縦軸は造波抵抗係数です。
曲線は理論計算、丸印は実験結果です。
船型改良診断によって低減された造波抵抗 (青:original船型、赤:改良船型)
造波抵抗の計算値と実験値の比較
 
Michell-Havelock理論に基づく薄い船の理論は、船の主要目、Cpカーブなどの船の形状と造波抵抗とを容易に関係づけることができます。
それを利用して、目的とする船速において造波抵抗を低減する最適なCpカーブを作成する方法を開発しました。
造波抵抗を小さくすることにより、機関出力を抑えCO2排出の少なく燃費の良い船型を開発することができます。

(6)船体構造強度の高精度詳細解析

船体構造強度設計において、荷重の正確な推定とそれによる構造部材に生じる変形、応力を精度よく求めることが必須の事項です.
波の中で運動する船舶の荷重を理論的に計算し、波浪のデータに基づき船の使用期間に生じる最大の荷重を求めます.
船体構造は有限要素法により、板や補強材を全て設計図どおりにモデル化します。
そのモデルに、理論計算した最大荷重を負荷して構造の変形や応力を求めます.
さらに、部材の座屈や疲労強度を評価します.
 

(7)Rankine Source 法による造波抵抗の計算

Rankine Source法とは、船体表面と水面を図の様にモデル化して船が前進することによって生じる波を計算し、それによる船体表面の圧力の分布から抵抗(造波抵抗といいます)を求める手法です.
船体表面形状は四角形や三角形のパネルの集合体で表現しますので、任意の形状の船舶の造波抵抗を計算することができます。
船が作る水面の波紋
船が作る波の等高線表示です.
造波抵抗の計算値と実験値との比較
図の横軸はフルード数(船速の無次元値)縦軸は造波抵抗の無次元値です。
Rankine Source 法が赤い線、青い丸印は実験値です。
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